不法残留の外国人290人に仕事斡旋

Young businessman on white background

不法滞在の外国人を、茨城県内の食品加工会社に派遣して働かせていたそうです。 あってはならないことですが、そもそも、なぜこんなことがおこりうるのでしょうか。今回は派遣会社が係わっているところが鍵だと思います。


派遣においては、雇用責任は派遣会社にあります。そして、派遣される側は、そのつもりがないにもかかわらず不法残留の外国人を使わされている可能性があります。今回は、派遣会社の社長が不法就労助長罪で逮捕されていますが、それでは派遣社員を受け入れた方はどうなるのでしょうか。また、なぜそのようなことが起こりうるのか。そのようなケースにはどう対応すべきか。派遣特有の問題がありますので、整理をしてみようと思います。

不法残留者かどうかは派遣先はわからない


派遣社員を選ぶことできない


派遣社員とは、雇用は派遣元(派遣会社)、業務の指示は派遣先からうけるという複雑な雇用形態です。そのため、労働者が不利益を被らないように様々な規定が定められています。派遣を直接に規定しているのが「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」、いわゆる派遣法と呼ばれている法律です。

労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。 第26条6項

いわゆる事前面談を禁止する法律といわれていますが、事前面談に限らず、そもそも派遣社員の特定ができませんから、派遣社員を受け入れる際には、履歴書の提出などをさせて、それを理由に断ることができません。もちろん外国人だからという理由で断ることもできません。つまり、派遣会社が不法就労の社員を送り込んでも、派遣社員の特定ができませんから、不法就労であることがわからないのです。

なぜ、すぐばれないのか


外国人を雇用したときの事業者の義務として、「外国人雇用状況の届出制度」というものがあります。外国人を雇用した際には、雇用者はハローワークに届け出る義務があります。

(外国人雇用状況の届出等) 第二十八条(抄) 事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合またはその雇用する外国人が離職した場合には、 厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格、在留期間その他厚生労働省 令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。

しかし、これも雇用しているのは派遣会社なので、事業者は係わることがありません。派遣会社が怠っていたり、故意に届けなければ国の知るところとなりません。ですから何年も働いてくれていてありがたい、良い社員だと思っていても、その外国人が不法残留の可能性があります。

派遣先は罪に問われないか?


知っていれば入管法の定める不法就労助長罪にあたります。

第73条の2①次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又これを併科する。

  1. 事業活動に関し、外国人に不法就労活動させた者
  2. 外国人に不法就労活動をさせるためのこれを自己の支配下に置いた者
  3. 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあっせんした者


入管法が定めているのは、「雇用する」ではなく、「不法就労活動をさせた者」「自己の支配下に置いたもの」です。つまり、知っていれば罪にとわれます。罰則規定に関しては、刑法の特別法にあたるため「未必の故意」といわれる理論が適用される可能性があります。(そうなるだろうとわかっているのに、あえて知らないふりをして放置しておくこと。)つまり過失についても、「避けるべきリスク」と考えた方が良いと思います。

危険回避のための対策方法


今回のように、派遣会社側が故意でおこなった場合はどうしようもないのですが、それでも雇用する側として、何かしらの対策をやらないよりはやったほうが良いと思います。

1.通知の義務(派遣法35条)を促す


派遣法では、派遣会社に派遣を依頼して、派遣社員の提案をされた場合、面接もできなければ、人を特定することもできません。しかし、そうはいっても、派遣労働者の保護と雇用の安定を図る観点から、派遣元事業主に対し、適正な雇用管理 のための措置を講じさせる必要があります。そこで派遣会社にたいして、雇用後派遣先に通知の義務を課し、氏名、性別、社会保険への加入状況を通知するように定めています。特に社会保険の通知は具体的なものでなくてはなりません。不法残留者であれば保険は入れません。外国人について、明確な回答がなければ疑ってみても良いでしょう。

2.ハローワークへの届出がされていることを確認する


派遣会社にたいして、ハローワークへの届出がされていることを確認してください。もしくは、人材派遣基本契約書にその条項を含めるという方法もあります。

不法残留者であることがわかった場合はどうするか


これは、派遣社員をかえてもらうしかありません。派遣元には「適正な派遣労働者の派遣義務」があります。一般的には以下のような条項をいれていると思います。この「本契約の目的を達成するために必要な資格」という条件が不足していますので、この条項に基づいて代替要員の派遣を求めることができます。もちろん、今回のように悪質なケースであれば、入国管理局への通報窓口がありますから、そこへ通報することも必要です。

乙は、本契約の目的を達成するために必要な資格、能力、知識、技術、技能、健康、経験等があり、派遣就業の目的を達する適正な労働者を甲に派遣しなければならない。
2 甲は、派遣労働者が前項の目的達成に必要な要件を欠いていると認めたときは、代替要員の派遣を求めることができる。派遣労働者が当該要件を欠くに至った場合も同様とする。 

東京入国管理局通報窓口 調査企画部門 03-5796-7256

参考条文


派遣法35条

(3) 通知すべき事項 派遣先に通知しなければならない事項は、次に掲げるものである(法第35条、則第27条の2、則 第28条)。
 ① 派遣労働者の氏名及び性別(派遣労働者が45歳以上である場合にあってはその旨並びに当該派 遣労働者の氏名及び性別、派遣労働者が18歳未満である場合にあっては当該派遣労働者の年齢並 びに氏名及び性別) 労働者派遣をする際に、性別等を派遣先に通知する趣旨は、派遣先における労働関係法令の遵守を担保することにあることに留意すること。 

② 派遣労働者に係る健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無 (「無」の場合は、当該書類が提出されていない具体的な理由を付して派遣先へ通知しなければ ならない(則第27条の2))。 

具体的な理由としては、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の適用基準を満たしていない場合 にあっては、単に「適用基準を満たしていないため」、「被保険者に該当しないため」等と記載するのでは足りず、
「雇用契約の期間が4週間であり、引き続き雇用されることが見込まれないため」
「1週間の所定労働時間が15時間であるため」等


適用基準を満たしていないことが具体的 にわかるものであることが必要である。 

また、被保険者資格の取得届の手続中である場合にあっては、単に「手続中であるため」等と記 載するのでは足らず、
「現在、必要書類の準備中であり、今月の○日には届出予定」等と、手続の 具体的な状況を記載することが必要である。

 なお、当該通知により、派遣先は当該労働者派遣に係る派遣労働者が派遣元において労働・社会 保険に加入するか否かについての明確な認識を持った上で、当該労働者派遣の受入れを行う効果が 期待できるものであることに留意すること。