「日本再訪したくない」は問題か?

四ツ屋駅

1月12日付けの西日本新聞に以下のような記事が掲載されました


「日本再訪したくない」 ネパールに帰国の留学生ら


https://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/300930/

多くのネパール人が日本に失望していて、その原因が日本にあるという印象の記事の内容と、この記事中の、取材した事実と、記事の方向性との間に温度差を感じてしまったので、触れておこうと思います。ただし、日本にも課題はあるので、そのことも最後に触れます。

数字に対する違和感


この記事では、133人の在日者、121人の帰国を対象に聞き取りを実施、日本での生活に「満足していた」のは61%、帰国者のうち、全体の50%が再来日を希望しない、27%が「分からない」と回答したという数字を示しています。

仮に、満足していた人が在日者、帰国者全員の61%だったとすると、残りは39%です。帰国者がどれくらいの比率に上るかわかりませんが、日本の生活に満足している人は、日本にいたいという人が多いでしょうから、満足していない人はおおかた帰国者に多いと考えるの自然です。

また在日ネパール人がすさまじい数で増えていることを考えると、帰国者の割合はさほど多くないと思います。そのうちの半分が再来日を希望していないというのは、全体からみれば極少数でしかないはずです。実際、私のところにビザの問題でくるネパール人で、「将来永住はいらない。帰りたい。」と言った人は、一人だけです。

低学歴者の不満足度を問題にしている違和感

記事では、生活満足度が低い人の傾向として「日本語能力が低い」「低学歴」としています。それでは低学歴の人が日本で働けるかといえば、答えはノーです。そもそも在留資格がおりません。それでも無理して来日する人がいるのです。

言葉がわからなくてもなんとかなるという勘違い


日本の就労ビザは、学歴などの要件を満たすと同時に、先に仕事ありきです。ですから、先に就労ビザをもらって働けるわけではありません。しかし、私の事務所には、海外在住の方からも、「日本で働きたいのでビザが欲しい」という問合せが頻繁にあります。

つまり、彼らは、単純労働なら言葉も少々通じなくてもなんとかなるだろうと思って問合せをしてきます。日本にきているネパール人の場合、もうちょっと詳細な情報は持っていますが、言葉に関する甘さに関しては大して差はありません。

ビザがあれば日本にいられるという勘違い


私のところにきた事例の中でも、最悪な留学生の例をあげます。彼はほとんど日本語は話せず、英語もたどたどしく、ネパール人の友人に連れ添ってもらってやってきました。

数年日本で働けば、しっかり稼げると思い、100万近い日本語学校の授業料を支払い、留学のビザで来日します。幸いなことに2年間のビザをもらえました。ここで大きな勘違いを彼はしてしまいました。ビザがあるから2年間はいられると思ってしまったわけです。

そこで、学校には一度も行かず、アルバイトにあけくれ、毎月250時間ほど働き、30万以上稼いでいました。さて、夏休みを迎えたころに入管から手紙をもらいます。申請に虚偽があるので、出頭しないさいという内容です。

日本のビザは、永住を除いて活動にたいして与えられます。その活動を90日以上しなくなったときには、帰国を余儀なくされます。留学ビザは勉強という活動をするためのビザです。長期にわたり授業にでない学生がいれば、学校は入管に報告します。その留学生の居どころがわかれば、入管はその留学生を呼びつけ、在留資格を取消し、帰国を促します。

留学の在留資格更新時の出席率の基準は80%です。つまり出席率が80%にみたない、また、なんとか80%は満たしていても、週28時間を超えて働いていたなどのケースでも、前述の彼と同じ結果になります。そしてこの種の事例は山のようにあります。

このようにしてビザ更新ができなかった人が、日本に戻りたくないと言ったとしても、無理はありません。それは日本人の心の持ち方の問題でも、制度上対応できる問題でもありません。

なぜ、彼らはそこまで働くのか


開発途上国からの私費留学は経済的に無理がある


前述の彼のように、働くことだけが目的のケースもありますが、大半は別の理由です。高額な授業料を払い、普通に生活をするのは、日本人でも大変です。ましてや、日本より、経済水準の低い国から仕送りをして留学生を支えられるのは相当の収入がある世帯です。

最初の入学金はなんとかなったけど、後はバイトで乗り切るつもりで日本にやってくる留学生は後をたたないのです。ここにもう一つのドロップアウトの原因があります。授業料が払えなくて、学校をやめ難民申請をして日本にいる偽装難民などがこうやって生まれます。

日本語の重要性


この記事の中身において、日本人ができることがあるとすれば日本語に関することだと私は思います。何故、日本語学校に通っているのに、日本語を話せない学生がたくさん生まれるのか。その問題は、解決できるし、すべきだと考えます。

日本語が話せない原因


同国人同士で固まる


ビザのこういう仕組みをわかっている学生は、なんとか切り詰めて生活します。一番の節約は一緒にすむことです。大体4,5人が一緒に住んでいることが多いと思います。結果として同国人で生活をすることになり、日本語は、定型の言葉ですむだけのアルバイトと授業だけでしか使わないと上達はしません。

日本語学校の問題


これはタンザニア出身の留学生と話していて、意見が一致したので、やっぱりそうなんだと確信をしたことなのですが、大学の日本語別科などで日本語を学んだ人はかなりしっかりした日本語を話しますが、日本語学校でしか学んでいない人で、日本語が上手な人はあまりいないのです。

日本が対応できること


日本語の教育機関のレベルアップ


実は、日本語学校には監督官庁がありません。設立時の申請先は入国管理局です。しかし、教育機関としての細かいカリキュラム、生徒の指導要領などの監督官庁はないのです。その結果、授業はおざなり、あげくの果ては不法就労斡旋などを、どうどうと行う学校もでてきてしまいます。

外国人の日本語になれる


なかなか難しいのですが、少々の誤用は許してあげるような寛大さがぼちぼち必要なのかもしれません。

「私どものほうでやらせていただきます」という意味の日本語を、「わたくしがやってあげます」と言われると、多くの日本人はむっとすると思います。この種の間違いは、レベルの高い間違いですが、接客業では嫌われます。不動産屋さんの内覧などでは、それが理由で契約が流れるなどということを不動産屋さんから聞いたことがあります。

これは矛盾なのですが、高学歴の人を必要としない生活現場に近い職種ほど、正確な日本語を要求されてしまうのです。アメリカでトランプ支持者が「英語が話せるようになってから来なさいよ」と叫んでいるのを聞いたことがあります。結局、日本でも同じ事がおこります。

外国人の在留問題は、結局、永住など移民問題につながります。そこで最も重要なのが日本語教育であり、日本の社会に根付かせる同化施策です。同化政策というと聞こえがよくありませんが、日本人のやり方を最初から教えていくということです。

長くなりましたが、この記事のようなアンケートの数字の側面は、放っておけば良いというレベルだと思います。それとは別に、日本が外国人を受け入れていかなければならないとするなら、まずは言葉の問題、そして日本社会へ同化させる努力をする必要があります。ヨーロッパのように次の世代で摩擦がおきないためにも。