工場、飲食店の在留資格問題


工場で技術・人文知識・国際業務


3月15日付けの産経新聞に以下のような記事があがっていました。

通訳のはずが…実際は焼き鳥の串打ち 食肉加工会社社長を逮捕


http://www.sankei.com/west/news/170315/wst1703150077-n1.html

これは、我々入管業務を行う行政書士も襟を正さなくてはいけないところです。

事件の概要


日本の就労ビザは、技術・人文知識・国際業務というビザにほぼ集約されています。これは、通常の会社員、要はオフィスワークに与えられる在留資格です。技術・人文知識・国際業務がどのような資格なのかは、在留資格一覧のページをごらんください。このビザを申請、取得させ、実際には工場で焼き鳥の串打ちをさせていたことで逮捕に至ったという

事件の問題点


今回の事件は、会計や通訳を行うという申請をしていました。本当に会計や通訳をしていれば、特に罪には問われません。たぶん、工程管理などの事務方、仕入部門での業務などでも問題はないでしょう。

日本の在留資格は活動に与えられるものと、身分に与えられものがあり、技術・人文知識・国際業務は活動に与えられる在留資格です。そして、活動に与えられる在留資格では、その活動が厳しく制限されます。つまりオフィスワークに与えられる在留資格で、現場で働いてはいけないということです。

実際の審査


今回のケースでよく5人も審査を通ったと思うのですが、工場で技術・人文知識・国際業務の申請をする場合には、申請者の業務が単純労働ではないということをかなり厳しく見られます。一般的に提出する資料だけを添付して申請をしても、間違いなく追加書類の要請がきます。

一体この人は何をする人なのか、どこではたらくのか、職場の様子はどうなのか、一日のスケジュールはどうなっているのか等、かなり細かく見られます。

例外はないのか?


それでは、技術・人文知識・国際業務を取得した外国人が現場で働くことはありえないのでしょうか? 実はありうるのです。それは、通常の新入社員研修の範囲であることが条件です。

日本人を雇用した場合でも、現場のことが全くわからないのでは話になりませんから、新入社員教育をほどこすはずです。その際に、工場での勤務も経験させることがあるでしょう。つまりこの範囲であれば可能だということです。

当然、それは適切な範囲でなければなりません。適切な範囲とは、会社が通常行っている範囲です。日本人の大卒者は3ヶ月、外国人は1年では適切な範囲とはいえません。

形だけ会計にしておこう、形だけ通訳にしてこうというような手段は今回のように不法就労助長罪となりますので、十分お気を付けください。

飲食店の場合


それでは飲食店の場合はどうでしょうか。やはり工場と同じです。更に、飲食店の場合、お客様への通訳というのは認められません。メニューの工夫や、日本人従業員の教育でどうにかなるだろうというのが入管の判断です。

人手不足への対応


好意的な見方をすれば、今回は、人手不足のため、外国人を使わざるをえなかったことが原因です。そこで、日本政府が人手不足への対応をどのように考えているのか、実は、昨年からいわゆる単純労働への在留資格の緩和は何度か報じられています。その中で、介護という在留資格が新設されたことは記憶にあたらしいところです。

さらに、3月10日の時事通信で内閣の「国家戦略特区法」の改正に関する記事が報じられました。


http://sp.m.jiji.com/search/article/span//offset/0/key/%8FA%94_

その中に外国人の在留資格に関する部分があり、「高い専門性を持つ外国人が農業分野や観光などサービス分野で就労しやすくなるよう、在留要件を緩和する」との内容が盛り込まれています。

まず外国人の就農に可能性がでてきました。また観光などのサービス分野も対象であるとのことです。例えば、ホテル、旅館に加え、飲食店などでの就業が可能になれば、かなり効果のある法改正だと思います。さらには、今話題の宅配業界などもサービス業というくくりで対応してもらえるとずいぶん現場の人手不足には効果がありそうです。国家戦略特区法の改正ですから、国家戦略特区に自治体が手をあげる必要がありますが、まずは実現してもらいたいところです。