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高度人材に1年で永住権

高度人材という在留資格があります。これは、高度な知識や技術をもった外国人に日本で活躍してもらうために、平成24年5月から採用された優遇制度です。

様々な優遇処置があるのですが、その中に永住許可申請までに要する期間に関する優遇制度があります。

通常は10年の期間が必要なのですが、高度人材の場合5年で永住申請ができます。それを更に3年にし、その中でもポイントの高い外国人には1年で認めようというのが今回の決定です。

http://www.sankei.com/life/news/170118/lif1701180006-n1.html

高度人材とは


在留資格の名称としては、正しくは、高度専門職と言います。高度人材外国人の活動内容を「研究」、「技術・人文知識」「経営・管理」にわけます。在留資格の「研究」、「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」に、それぞれ一致していると考えていただいて大丈夫です。

1. 高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」


研究者として大学や研究所で研究にあたる人

2. 高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」


企業などで働く方

3. 高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」


企業の経営にあたる方



そして、それぞれの活動の特性に応じて,「学歴」,「職歴」,「年収」,「研究実績」などの項目ごとにポイントを設定し,それそれの基準で、70ポイントを上回れば,高度専門職の資格を得ることができます。

基準は、それぞれの分類で違います。例えば、「経営・管理」などは経営者の資格ですから、年収においては高いハードルが設けられていますが、「研究」においては「経営・管理」ほど年収は重要視されません。具体的なポイントはこちらを参照してください。


http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_3/pdf/06_point-hyou.pdf

中小企業の優遇制度


高度人材ポイント制の申請を行う外国人の方が所属する大学・企業等の機関が,イノベーション促進支援措置を受けている場合には,特別加算としてポイントが加点されます。通常1 0点なのですが、所属機関が中小企業である場合は20点、中小企業の優遇制度があります。外国人を雇用している中小企業の方は、一度確認してみてください。

イノベーション促進支援措置一覧


http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_3/pdf/innovation-sokushin.pdf

申請3年になるとどうなるのか


基準に基づいて、日本の大学を卒業して一般企業に就職した留学生のポイントを具体的に算出してみます。

日本の大学を卒業: 10 + 10 (日本の大学は10ポイント加算がある)

年齢は27才: 15ポイント (30才以下)

日本語のN1資格をもっている: 15

年収は300万: 0 (年収は300万以上が条件ですが、ポイントは400万から加算)

イノベーション促進支援措置を受けている: 中小企業 10 +10 (中小企業は10ポイント加算)

これで70ポイントになります。現在の制度では、この状態を5年続けなければなりません。もし、日本の大学を4年間通ったとすると、これで9年になります。あまりメリットはありませんね。しかし、これが3年になると、7年間で永住申請が可能になります。

1年で永住申請できる人、


更に80点を超えれば1年での永住申請を認めようというのが今回の決定です。日本で外資系の企業のマネージャーに就任する40代の役員の場合で考えてみます。

MBAを取得している:25

5年の経験:15

年収は2500万:40

職位は取締役:5

85ポイントになり、1年で永住申請が可能になります。経営・管理の要件においては、年収が大きな要素を占めることがわかります。

永住以外の優遇処置


高度人材には永住申請期間以外にも優遇処置があります。

1 複合的な在留活動の許容


通常,外国人の方は,許可された1つの在留資格で認められている活動しかできませんが,高度人材外国人は,複数の在留資格にまたがるような活動を行うことができます。例えば,大学での研究活動をしながら関連する事業を経営するなどが考えられます。

2 在留期間「5年」の付与


最長の在留期間である「5年」が一律に付与されます。この期間は更新することができますが、3年で永住申請が可能となるため、今後はあまり意味はないかもしれません。

3 配偶者の就労


在留資格「教育」,「技術・人文知識・国際業務」などに該当する活動を行おうとする場合には,学歴・職歴などの一定の要件を満たし,これらの在留資格を取得する必要がありますが,高度人材外国人の配偶者の場合は,学歴・職歴などの要件を満たさない場合でも,これらの在留資格に該当する活動を行うことができます。

4 親の帯同


現行制度では,就労を目的とする在留資格で在留する外国人の親の受入れは認められません.
しかし高度人材の場合、一定の要件、条件を満たせば、外国人本人又はその配偶者の親(の入国・在留が認められます。7歳未満の子(養子を含みます。)を養育する場合、妊娠中の配偶者又は妊娠中の高度人材外国人本人の介助等を行う場合に限られます。

5 家事使用人の帯同


高度人材外国人については,一定の要件の下で,外国人の家事使用人を帯同することが認められます。

「日本再訪したくない」は問題か?

四ツ屋駅

1月12日付けの西日本新聞に以下のような記事が掲載されました


「日本再訪したくない」 ネパールに帰国の留学生ら


https://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/300930/

多くのネパール人が日本に失望していて、その原因が日本にあるという印象の記事の内容と、この記事中の、取材した事実と、記事の方向性との間に温度差を感じてしまったので、触れておこうと思います。ただし、日本にも課題はあるので、そのことも最後に触れます。

数字に対する違和感


この記事では、133人の在日者、121人の帰国を対象に聞き取りを実施、日本での生活に「満足していた」のは61%、帰国者のうち、全体の50%が再来日を希望しない、27%が「分からない」と回答したという数字を示しています。

仮に、満足していた人が在日者、帰国者全員の61%だったとすると、残りは39%です。帰国者がどれくらいの比率に上るかわかりませんが、日本の生活に満足している人は、日本にいたいという人が多いでしょうから、満足していない人はおおかた帰国者に多いと考えるの自然です。

また在日ネパール人がすさまじい数で増えていることを考えると、帰国者の割合はさほど多くないと思います。そのうちの半分が再来日を希望していないというのは、全体からみれば極少数でしかないはずです。実際、私のところにビザの問題でくるネパール人で、「将来永住はいらない。帰りたい。」と言った人は、一人だけです。

低学歴者の不満足度を問題にしている違和感

記事では、生活満足度が低い人の傾向として「日本語能力が低い」「低学歴」としています。それでは低学歴の人が日本で働けるかといえば、答えはノーです。そもそも在留資格がおりません。それでも無理して来日する人がいるのです。

言葉がわからなくてもなんとかなるという勘違い


日本の就労ビザは、学歴などの要件を満たすと同時に、先に仕事ありきです。ですから、先に就労ビザをもらって働けるわけではありません。しかし、私の事務所には、海外在住の方からも、「日本で働きたいのでビザが欲しい」という問合せが頻繁にあります。

つまり、彼らは、単純労働なら言葉も少々通じなくてもなんとかなるだろうと思って問合せをしてきます。日本にきているネパール人の場合、もうちょっと詳細な情報は持っていますが、言葉に関する甘さに関しては大して差はありません。

ビザがあれば日本にいられるという勘違い


私のところにきた事例の中でも、最悪な留学生の例をあげます。彼はほとんど日本語は話せず、英語もたどたどしく、ネパール人の友人に連れ添ってもらってやってきました。

数年日本で働けば、しっかり稼げると思い、100万近い日本語学校の授業料を支払い、留学のビザで来日します。幸いなことに2年間のビザをもらえました。ここで大きな勘違いを彼はしてしまいました。ビザがあるから2年間はいられると思ってしまったわけです。

そこで、学校には一度も行かず、アルバイトにあけくれ、毎月250時間ほど働き、30万以上稼いでいました。さて、夏休みを迎えたころに入管から手紙をもらいます。申請に虚偽があるので、出頭しないさいという内容です。

日本のビザは、永住を除いて活動にたいして与えられます。その活動を90日以上しなくなったときには、帰国を余儀なくされます。留学ビザは勉強という活動をするためのビザです。長期にわたり授業にでない学生がいれば、学校は入管に報告します。その留学生の居どころがわかれば、入管はその留学生を呼びつけ、在留資格を取消し、帰国を促します。

留学の在留資格更新時の出席率の基準は80%です。つまり出席率が80%にみたない、また、なんとか80%は満たしていても、週28時間を超えて働いていたなどのケースでも、前述の彼と同じ結果になります。そしてこの種の事例は山のようにあります。

このようにしてビザ更新ができなかった人が、日本に戻りたくないと言ったとしても、無理はありません。それは日本人の心の持ち方の問題でも、制度上対応できる問題でもありません。

なぜ、彼らはそこまで働くのか


開発途上国からの私費留学は経済的に無理がある


前述の彼のように、働くことだけが目的のケースもありますが、大半は別の理由です。高額な授業料を払い、普通に生活をするのは、日本人でも大変です。ましてや、日本より、経済水準の低い国から仕送りをして留学生を支えられるのは相当の収入がある世帯です。

最初の入学金はなんとかなったけど、後はバイトで乗り切るつもりで日本にやってくる留学生は後をたたないのです。ここにもう一つのドロップアウトの原因があります。授業料が払えなくて、学校をやめ難民申請をして日本にいる偽装難民などがこうやって生まれます。

日本語の重要性


この記事の中身において、日本人ができることがあるとすれば日本語に関することだと私は思います。何故、日本語学校に通っているのに、日本語を話せない学生がたくさん生まれるのか。その問題は、解決できるし、すべきだと考えます。

日本語が話せない原因


同国人同士で固まる


ビザのこういう仕組みをわかっている学生は、なんとか切り詰めて生活します。一番の節約は一緒にすむことです。大体4,5人が一緒に住んでいることが多いと思います。結果として同国人で生活をすることになり、日本語は、定型の言葉ですむだけのアルバイトと授業だけでしか使わないと上達はしません。

日本語学校の問題


これはタンザニア出身の留学生と話していて、意見が一致したので、やっぱりそうなんだと確信をしたことなのですが、大学の日本語別科などで日本語を学んだ人はかなりしっかりした日本語を話しますが、日本語学校でしか学んでいない人で、日本語が上手な人はあまりいないのです。

日本が対応できること


日本語の教育機関のレベルアップ


実は、日本語学校には監督官庁がありません。設立時の申請先は入国管理局です。しかし、教育機関としての細かいカリキュラム、生徒の指導要領などの監督官庁はないのです。その結果、授業はおざなり、あげくの果ては不法就労斡旋などを、どうどうと行う学校もでてきてしまいます。

外国人の日本語になれる


なかなか難しいのですが、少々の誤用は許してあげるような寛大さがぼちぼち必要なのかもしれません。

「私どものほうでやらせていただきます」という意味の日本語を、「わたくしがやってあげます」と言われると、多くの日本人はむっとすると思います。この種の間違いは、レベルの高い間違いですが、接客業では嫌われます。不動産屋さんの内覧などでは、それが理由で契約が流れるなどということを不動産屋さんから聞いたことがあります。

これは矛盾なのですが、高学歴の人を必要としない生活現場に近い職種ほど、正確な日本語を要求されてしまうのです。アメリカでトランプ支持者が「英語が話せるようになってから来なさいよ」と叫んでいるのを聞いたことがあります。結局、日本でも同じ事がおこります。

外国人の在留問題は、結局、永住など移民問題につながります。そこで最も重要なのが日本語教育であり、日本の社会に根付かせる同化施策です。同化政策というと聞こえがよくありませんが、日本人のやり方を最初から教えていくということです。

長くなりましたが、この記事のようなアンケートの数字の側面は、放っておけば良いというレベルだと思います。それとは別に、日本が外国人を受け入れていかなければならないとするなら、まずは言葉の問題、そして日本社会へ同化させる努力をする必要があります。ヨーロッパのように次の世代で摩擦がおきないためにも。

国保悪用の外国人急増

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2017年1月6日付けで、産経新聞でとりあげられた記事です。

「留学と偽り入国、高額医療費逃れ 厚労省、制度・運用見直し検討」と伝えられています。
お時間のある方は、以下のリンクをご覧ください。

http://www.sankei.com/affairs/news/170106/afr1701060006-n2.html

この記事の中で、行政書士がこの悪用に積極的に荷担しているかのように、書かれているので、本当にそんなことが可能かというところも含めて、この問題の難しさをとりあげてみました。

記事の要点

医療滞在というビザ


医療先進国である日本には、日本でしかできない治療というのがあります。そのため、日本で治療を受けたい富裕層の外国人はたくさんいます。医療というのは観光と同じようインバウンド事業という側面をもっており、そのために政府も「医療滞在」という在留資格を設けています。

高額医療の頭打ち制度


日本でしかできない治療というのは、先進治療であり、非常に高額です。日本人の場合、皆保険制度がありますので、保険適用がされる治療であれば、収入によって、一定額で頭打ちです。しかし、これを全額まともに支払うと年間数千万というケースもあります。医療滞在というビザで治療をうけるときは、当然全額支払う必要があります。

外国人にも適用される皆保険制度


外国人であっても、日本で生活する限り、この皆保険制度の対象となります。外国人も日本人同様に納税をしているわけですから当然ともいえますし、中には永住者で何十年も高額な税金を納めている人もいるわけで、その方たちが保険制度の恩恵をうけることにそれほど違和感はないと思います。

悪用の手口


社会保険への加入


中長期滞在者、具体的には、3ヶ月を超えるビザを保有する外国人(医療滞在は該当しません)は、健康保険への加入が義務付けられます。そこで、安易にとれそうな中長期滞在のビザを取得し社会保険に加入し、日本人と同様の高額医療の頭打ちを狙うわけです。

ビザとの関係


具体的には「留学」もしくは、「経営・管理」というビザを取得します。「留学」の場合、行政書士の出番はあまりないので「経営・管理」に絞って書きます。

「経営・管理」のビザにもいくつか種類があるのですが、いわゆる「投資」を伴うビザの取得条件は、500万の資本金、もしくは、日本人か永住など身分系のビザを保有する外国人を2人雇用すること。独立した事務所を構えることです。

上記の条件で会社を設立し、ビザを取得して、会社から給料をとると厚生年金への加入が義務づけられます。法令通り厚生年金に加入する、もしくは適切ではありませんが、国保に加入するなどの手続で日本人と同様の頭打ち制度を利用できるわけです。

行政書士の積極的関与は可能か?


今回は「国内にいる行政書士がブローカーとして指南する」と書かれていますので、海外のエージェントと直接取引のある行政書士事務所が介入しているという書き方です。つまり、最初から架空の会社設立をして、高額医療の頭打ち制度を利用しようとすることを問題視しているのですが、実務上可能なのでしょうか。

「経営・管理」のビザを取得する要件自体は前述のとおりですが、一方でこのビザは審査に時間のかかるビザです。ビザ免除国でない国の方の場合、1ヶ月や、2ヶ月ですんなりでるケースは滅多にありません。さらに申請前に法人設立する方法が一般的ですから更に時間がかかるわけです。もちろんおりない場合もあります。

日本でしかできない治療をするのに、一日でもはやく治療を開始したいはずです。このビザがでるのを待っていては手遅れになるでしょう。もちろんでないこともあります。つまり条文上では可能ですが、実務上は、そういう手があるよというアドバイスはできても、それほどタイミングよくビザはおりないのです。

そうすると、短期滞在で治療をすすめながら、同時に会社設立、タイミングよくビザが下りれば、短期からの変更申請をする。短期からの変更申請は、原則認められませんが、人道的理由、例えば病気で飛行機にのれないなどの事情があれば認められます。

ちなみにアジアの国で90日のビザ免除国はシンガポールと韓国だけです。私も医療滞在ビザを扱いますが、この二つの国のケースは経験がありません。彼らは自国でも、それなりの治療を受けられますし、日本以外の国を選択することも可能です。

全体としてのスキームをたてて、クライアントと打ち合わせを積んで初めて可能になるわけです。場合によっては、医療機関の協力も必要になります。ダメで元々という前提ですすめることも必要でしょう。海外と強いパイプがあり、計画的に業務を進めていないと不可能です。もしかすると、そういう規模で関わっている行政書士事務所があるのかもしれません。

医療ビザ取得者から法人設立を求められるケース


私の場合、海外エージェントの取引はないので、医療滞在の案件を扱うのは、病院関係者からの紹介だったり、私の英語ページをみて問合せてくるケースしかありません。

具体的には、医療滞在を目的とした短期滞在で入国している方からの問合せです。手術自体は3ヶ月の短期滞在で終わるけれど、リハビリも日本でしたいので、6ヶ月の医療滞在に変更したいというケースです。

このケースで悩ましいのは、日本にきたらビジネスチャンスがあることがわかったので、会社を作りたいという申し出です。実際にビジネスをすると言っている以上、法的にも、道義的にもこの種の依頼は断れません。結果として、同じ事態を招きます。


参照:行政書士法
(依頼に応ずる義務)

第十一条  行政書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない。

結局はビザ制度の問題

ビジネスビザのハードルが低い日本


日本の「経営・管理」ビザは、世界的に見ても格安です。私の事務所で取り扱ったオーストラリアの方など、そのハードルの低さにびっくりしていました。例えば、オーストラリアの場合、会社設立だけではビザはおりません。会社が一定規模に育つまで、現地の人を雇用して、自分は短期ビザで行き来をするくらいしか方法がありません。

グレイゾーン


この記事の作成者が指摘しているのは、500万で架空の会社を設立するという悪質なケースではないかと思います。ところが、1億から2億の投資をして会社を設立し、会社が不動産を購入し、不動産の賃貸収入をえながら、社会保険制度を利用するというようなケースもあるわけです。

本来なら数千万の治療費を払える人たちです。こういう人たちにこそ、医療滞在でしっかりお金を置いていって欲しいのです。しかし、こういう人たちには、不動産投資をするだけで、日本の医療制度を利用し、本来数千万の出費を払わずにすませる手段が残されています。

医療会計現場での問題


逆に、お金のない外国人が保険に入っていないと、医療現場は大変です。アメリカのように、払えなければ診ないよというような習慣が日本人にはありません。目の前で苦しんでいる人を、保険がないなら診ませんよとはいえないわけです。むしろ、保険に入っていてくれないと困ります。

こうやって考えると、社会保険制度の見直しだけでは、この問題は解決できないことがわかると思います。どこまでどのようにコントロールするのか、システム設計には大変な知恵が必要です。

在留資格の申請をしている行政書士をしている立場からすると、「経営・管理」のビザ発給に雇用要件など、事業実態を確認できる更に厳しい審査基準を設ける、入国後1年以上経過しないと社会保険の加入は認めないなど、むしろビザ要件の見直しが必要ではないかと思います。