特定技能で外国人を雇用するには

特定技能という在留資格制度を利用します。外国人を現場で働く労働者として雇用できる業種は16業種あります。受入企業、雇用される外国人ともに、一定の条件があります。このコーナーでは、それぞれどのような条件を満たせば、この制度を利用して外国人を労働者として雇用できるのか、またそれ以外の方法はないのかについて説明します。

制度の概要

特定技能の制度が利用できるのは、以下の16業種です。これ以外の業種では、この制度は利用できません。

特定技能指定16業種

介護分野ビルクリーニング分野工業製品製造業分野1建設分野
造船・舶用工業分野自動車整備分野航空分野宿泊分野
農業分野漁業分野飲食料品製造業分野2外食業分野
自動車運送業鉄道林業木材産業
特定技能16業種
  1. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」から名称が変更されました。また、新たに7業務区分(紙器・段ボール箱製造、コンクリート製品製造、陶磁器製品製造、紡織製品製造、縫製、RPF製造、印刷・製本)が追加されました。
    ↩︎
  2. 食料品スーパーマーケット及び総合スーパーマーケットの食料品部門における惣菜等の製造も可能​​となりました。 ↩︎

特定技能には1号と2号があります。

1号で働ける期間は上限5年です。1号を終え、現場のリーダー的立場で仕事ができる外国人は2号に移行できます。2号が許可されるのは、現在のところ、建設業、造船・舶用工業の2産業分野だけですが、介護を除く全業種に2号を創設する報道がされたばかりです。(2021年11月現在)介護については、「介護」という在留資格がありますので、そちらを取得してより長い勤務を目指すことになります。

外国人は日本語試験と特定技能試験に合格する必要があります。例外として、技能実習3年を良好に終えた外国人には試験が免除されます。 外国人の要件

特定技能制度の仕組み
図1. 特定技能制度のしくみ
(クリックすると図を拡大して表示できます)

雇用するために会社がしなければならないことは?

受入企業の条件

1 受入れ機関が外国人を受け入れるための基準

特定技能で外国人労働者を雇用する企業には、労働法令違反については厳しい規制が設けられています。厳しいといっても、日本の労働法令を正しく守れということです。残念ながら、日本の企業の7割に何かしらの労働法令違反があると言われています。この摘発にあった瞬間に、外国人は雇用できなくなります。コンプライアンスを条件に外国人を雇用することを認めているとお考えください。

  1. 外国人と結ぶ雇用契約が違法でなく、日本人と同等以上の報酬を支払っていること
    外国人に提示する労働条件が違法なものでないこと、報酬は日本人と同等以上であることが求められます。
    それでは、「言葉の問題で評価に差をつけることはできるでしょうか。」これはできないと考えてください。理由は、外国人の日本語能力の条件をN4と定めているからです。
  2. 5年以内に出入国管理または労働法令に違反していないこと
    (外国人だけでなく、日本人に対しての労働法令違反もNGです)、また採用する外国人と同等の業務を行う日本人を含む人材を離職させていないこと。
  3. 外国人が理解できる言語で、外国人の就労と生活を支援できること
    具体的には以下のような内容をカバーしている支援計画を、個々の外国人毎に作成し、出入国在留管理局に提出し、審査を受けます。

2 受入れ機関の義務

  1. 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行すること
  2. 外国人への支援を適切に実施すること。
  3. 出入国在留管理庁への各種届出

登録支援機関に全部委託すれば条件(3)「外国人が理解できる言語で、外国人を支援できること」も満たします。
→「受入れ機関が外国人を受け入れるための基準」の”3”「外国人が理解できる言語で、外国人の就労と生活を支援できること」を満たします。

支援は登録支援機関に委託できます
外国人の雇用手続きは専門家へお任せ下さい!

(注)(1)~(3)の義務を怠ると外国人を受け入れられなくなるほか,出入国在留管理庁から指導,改善命令等を受けることがあります。

外国人の要件

特定技能に申請する外国人は日本語能力と技能の2つの基準をクリアする必要があります。

1.日本語能力

特定技能を取得するための外国人の日本語能力は具体的に示されています。

JLPT(日本語能力試験)という試験のN4もしくはJFT Basic(国際協力基金日本語基礎テスト)という試験のA2という資格が必要です。

この試験に合格していれば、特定技能が要求している以下の要件を満たしていると判断されます。

  • ある程度日常会話が出来ること。
  • 生活に支障がない程度の日本語能力がある。
  • 特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力がある。

【参考】JFTのA2レベル目安

  • ごく基本的な個人的情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。
  • 簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる。
  • 自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。

2.技能能力

それぞれの産業分野における「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」が必要で、具体的には、各分野向けに行われる特定技能試験に合格している必要があります。試験は国内だけではなく、国外でも行われます。国外で行われる試験は、二国間協定を結んだ国で行われ、国によって行われる試験の種類も違います。

※技能実習2号を良好に修了しており、技能実習において修得した技能が,従事しようとする業務において要する技能と関連性が認められる場合は免除されます。

特定技能の外国人を採用する方法

方法は4つあります。外国人雇用とビザの相談室」では、以下の2から4に対応しています。

(1)技能実習生からの変更

一番多いパターンです。技能実習生を採用している企業であれば、3年を良好に終えれば特定技能に変更ができます。そのまま、変更の手続きを行うことで採用できます。

(2)留学生等からの変更

特定技能試験は適法に在留していれば誰でも受験できます。大半の留学生は技術・人文知識・国際業務というホワイトカラーでの就職を目指しますが、実はそう簡単ではありません。(技術・人文知識・国際業務の言葉の壁をごらんください)、そのため特定技能試験をうけ、特定技能での就職を考えている留学生もかなりいます。また、家族滞在などの資格で来日している外国人にも特定技能試験に合格している人はいます。

(3)他社からの転職

特定技能では転職が認められています。そのため、他社からの転職者をうけいれることも可能です。ただし、他のビザと違って、職場が変わると変更申請(別記事参照)をする必要があり、変更に伴い仕事のできない期間が発生してしまいますので注意が必要です。

(4)海外から呼び寄せる

特定技能試験は海外でも行われています。そのため海外には特定技能試験の合格者を送り出す機関があり、送出し機関を経由して直接呼び寄せる方法もあります。「外国人雇用とビザの相談室」では、ネパール、ミャンマー、ベトナム、タイの現地送出し機関と提携しています。

 コラム「特定技能以外の方法で外国人を雇用することはできないのでしょうか?」