帰化申請のご依頼をいただいたお客様であった事例です。
今年4才になるお子さんの在留カードと住民票の国籍欄が「無国籍」でした。ご両親の国籍は同じで、もちろん「無国籍」ではありません。法的に婚姻関係にあるご両親から生まれたのに、お子さんだけが「無国籍」なのはなぜでしょう?
ある自治体での話ですが、出生時「国籍不明」で受け付けていました。自治体は原則通りと言うのですが、通常は国籍が記載されます。日本の届出の方が、本国の領事館への届出よりも先になるので、生まれたばかりのお子さんは、パスポートもありません。そのため、パスポートの提出を約束し、在留カードにも国籍が記載されます。その国籍は、自治体の受付に基づいて記載されるので、自治体が無国籍として受けつければ無国籍になります。
その自治体では、通常は後追いで、本国の出生証明書を持って、修正するということなのです。
さて、問題は、出生からすでに数年経過している今回のようなケースも、同様の手続き、同様の書類で訂正できるのかという点です。結論から言うと、これは駄目です。入管からの指示によらないと国籍は訂正できないのです。
結局、
- 入管に、在留カード記載事項変更届出書を提出、在留カードの国籍欄を訂正
- 住所のある市役所で住民票も訂正する。
という流れになります。
この方の場合、在日大使館のない国の出身だったこと、その国には容易に戻れない事情があり、すべて郵送で本国とのやりとりとなりました。
婚姻関係にない男女に生まれた子どもは?
婚姻関係にあるのに無国籍というお話をしましたが、婚姻関係がないケースというのはさらに大変です。
よくあるのは日本人男性と外国人女性の間に子どもが生まれたケース。男性側が認知をすれば子どもはすんなり日本国籍が取得できます。母子ともに日本に住んでいれば、お母さんも定住者が取得でき、さほど面倒なことになりません。
ところがこれが海外での出来事だと、いろいろ面倒がおきます。男性が認知していれば、領事館経由で子どもは国籍取得が可能です。問題は、その子の教育をどうするかです。お母さんには現地の生活しか経験がないので、日本に戻っての生活より、現地の子どもとして育てた方が良いだろうという選択をしたとします。ところが、アジアの多くの国では、両親がその国の国籍をもっていないと受け入れてくれないことが多いのです。日本の場合、外国人がオーバーステイであっても学校は受け入れます。日本国民の負担が増えているという考え方もあるのですが、長期的にみればこれは悪い制度ではありません。日本に住んでいる以上、日本語がしっかりできた方が良いからです。
話が脱線しましたが、日本国憲法は、教育を受ける権利と受けさせる義務を規定しています。
日本国憲法 26条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
② すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする
つまり、現地では教育を受ける権利を行使させることも受けさせる義務を履行することもできないのです。結局、日本にこなければならないのですが、これがまた少々面倒なのです。まず、日本のビザ(在留資格)は日本人の誰かが呼び寄せることで申請できます。ところが、呼び寄せる誰かがいないのです。子どもがその「誰か」になるのですが、海外にいますし、そもそもまだ意思表示もできませんから、申請人にはなれません。結局お父さんがなるしかないのですが、往々にして協力できない立場にいたりするので、やっかいなのです。
ちなみに、ある国では婚姻関係にない外国人の子の出生届には父親の名前が記載できない時期がありました。このケースでは、日本人の子である立証すら難しいことがあります。なぜなら、出生届がないので認知ができていないからです。