特定活動でおこったトラブル

特定活動という在留資格がある。この資格は実に便利な資格である。ただし、外国人にとってではない。日本政府にとって都合が良いのである。「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」というのがその資格の内容なのだが、要は法務大臣が決めて良いという資格である。法改正をしなくてもどんな外国人を受け入れるかを決めることができるという意味で便利なのだ。

なぜ、こういう資格ができたのかというと、要はなくては困るからである。こういう活動をする外国人ならば入国させても良いと決まると告示がされる。頻繁に新しい告示がでるのでその数は現在50件にも及ぶ。就労系では5号にワーキングホリデーなどが告示されている。

告示48号・告示49号にオリンピック関係者とその配偶者という告示がある。東京オリンピックのための資格である。​​就労系資格は、特手技能を除けば、技術・人文知識・国際業務しか認められておらず、原則大卒が条件である。
ところが、オリンピック関係者が全員大卒かというとそんなことはない。大卒しか入国できないとなると困ったことがおこるのだ。新たな在留資格を作るためには法改正をしなくてはならない。法律を改正するためには国会審議をしなければならないのだ。ちょっとしたイベントがある度に国会審議などやっていると身動きがとれなくなる。そこで、この特定活動を利用するのである。

愛・地球博記念公園(モリコロパーク)

「愛・地球博」というイベントがあった。そのイベントにスタッフとして働いてた外国人が退去強制にあったという話である。
この種のイベントの特定活動は6ヶ月がでるのが一般的だ。イベントの前後も活動はあるので、カバーできる6ヶ月をだす。その彼も6ヶ月をもっていた。そのパビリオンでちょっとした商談が持ち上がった。博覧会なので、自国の様々な物産を持ち込んで展示するので、当然商談も発生する。
そこで彼は一旦帰国して自国からサンプルをもって再度来日して商談に臨んだのだが、これが問題になった。パビリオンで商談があったところまでは良い、その商談のために再来日して行った活動は本来の万博スタッフとしての活動ではないということで、退去強制になったのである。

15年後、彼は経営管理の資格で堂々と入国するのだが、相当懲りたのだろう。何はして良くて、何はだめなのか今でも気になって仕方がないようだ、些細なことでメッセージが来る。ビザの期間が残っているからといって、日本で活動できるわけではないというのは他の在留資格でも同じなのだが、たかだか商談だろうと思う気持ちもわからなくはない。