永住申請の要件の中に、収入要件というのがある。
具体的な収入基準というのは公表されていないが、過去の入管の審査結果からおおよその判断はつく。
2年前に、別の行政書士に依頼をして不許可とされたがもう一度申請したいという依頼人がいた。
却下されるときは、入管から不許可通知が届くが、このケースでは「出入国管理及び難民認定法第22条第2項第2号に適合すると認められません。」と書かれていた。
第22条第2項第2号とは「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。」
つまり収入要件である。
不許可通知が来ると申請した本人もしくは、取り次いだ行政書士が詳細な理由を聞きにいく。
前回申請時の収入を見ると、家族は4人でギリギリかなぁというレベルだった。
理由説明を聞くときには聞き方のこつがある。
行政というのは、原則説明責任がある。つまり、こちらから適切な質問をすれば具体的に答えてくれる。
理由説明は、一度しか受けられない。他の行政書士が聞いているので、だめなことはわかっていたが、どうしても突っ込んだ説明を聞きたくて、ダメ元で永住審査部門を訪ねてみた。
案の定、二度は説明できないとのことだったが、親切な審査官で「一応調べてみます」と言って、情報を見てくれた。「個人的には、もう一度申請してみても良いかなぁ、とは思います」という意見であった。前回申請時より、収入があがっているので、チャンスはありそうだ。
実は、収入要件というのは、箸にも棒にもかからなという場合はともかく、必ずしも絶対的なものでもなく、他に大きく得点を稼げるものがあれば、多少判断に弾力性はある。そういう意味では、入管の審査というのは厳しいだけでもない。
尤も、そういう事情をわかっている私たち行政書士だからそんなことが言えるのであって、申請者から見れば、やはり入管は鬼ヶ島であるようだ。
脱線したが、その話を申請者にして、トライしてみたいという話になった。そこで、着手金もいただき、すべて書類も整え、必要な理由書も仕上げて、さぁ、申請となったところで、依頼者から連絡があった。
「子供が生まれたので、そのことは書かなきゃいけないか?」という。
我々からしてみたら、突然、扶養しなければならない子供が一人増えたのである。
最初に依頼を受けてから、2ヶ月しかたっていない。まさか、2ヶ月で子供ができるわけもない。依頼時にはわかっていたはずである。こういうのを青天の霹靂というのだろう。
もちろん、再度、収入要件を理由に不許可の憂き目にあったのだが、どれだけ注意しても、こういうことは起こるという頭の痛い話である。