強制送還ということばをよく聞くけど、実はそんな制度はない。「退去強制」(出国命令という少し軽い制度もある)という。
日本の在留資格をもっていない外国人を日本に呼び寄せるときに申請する在留資格認定証明書の交付申請書には、
「過去に日本にいたことがあるのか」、
「退去強制になったことがあるのか」
といった質問事項がある。
有・無で回答をし、有を選ぶとその時期も記載しなくてはならない。当然、呼び寄せる側にも、当人にも確認をする。
ところが、これを「無」と申告する人が意外に多い。そして入管から指摘されるのである。
今回は、入管から「無しと申告しているが、あるならその旨修正してくれ」という趣旨のお手紙がきた。これは異例で、本来、虚偽の申請は一発で却下である。
本人に確認したところ、30年近く前にアメリカ経由でなんどか日本に観光旅行にいったことがあり、オーバーステイがあったと白状した。
「30年も前で、数日だったし、入管からはオーバーステイだと告げられただけで、問題なく出国したので、申告しなかった」
としゃーしゃーとしているが、我々からみれば「ふざけるな」と言う話だ。
だが、30年前、オーバーステイは今ほど問題にならなかった。不法滞在の外国人が公園で堂々と偽造テレフォンカードを売っていた時代である。先日名古屋入管で亡くなったスリランカ女性のような問題は当時はまだなかったのだ。その後、入管法の改正で日系人を受け入れると同時に、不法滞在者の取り締まりが厳しくなった。
強制になっても5年で再び入国できるようになる。従って、今回のケースは結果として修正が可能だったのだが、却下されなかったからで、今回ばかりは入管の処分に感謝するしかなかった。